シワ研究

老化細胞に蓄積する
異常コラーゲンを分解する
「ナイアシンアミド」

本サイトで掲載している情報は、一般的な素材にも含まれる成分に関する学術研究成果です。特定の効果を保証するものではありません。本研究成果は限られた条件での成果です。

1. 研究ダイジェスト

  • 加齢などにより皮膚に蓄積する老化細胞ではコラーゲンが正しい構造を取れずに凝集体(異常コラーゲン)として細胞内に蓄積することを発見しました。
  • ナイアシンアミドが老化細胞に作用し、この異常なコラーゲンを除去することを明らかにしました。
図1:老化細胞における異常コラーゲンの蓄積とナイアシンアミドの異常コラーゲン除去作用

2. 研究の背景

 真皮に存在するコラーゲンは、線維芽細胞内で合成されたのちヒートショックプロテイン47と呼ばれる分子の助けを受けながら三重らせん構造を形成し、その後、細胞外へと分泌されたタンパク質です。正常な細胞ではストレスなどで正しい構造を取れずに細胞内で凝集してしまったコラーゲンは、オートファジーにより分解されることが知られています(図1, 引用文献1)。コラーゲンは肌のハリや弾力にとって重要な要素ですが、加齢とともに減少することでシワやたるみの原因となると考えられています。近年、加齢に伴い皮膚内で老化細胞が増加し、蓄積することが分かってきました(引用文献2)。また,老化細胞は炎症性サイトカインなどを分泌して周囲の細胞に悪影響を及ぼすことが知られていますが、老化細胞とコラーゲンの減少との関係は詳しく分かっていませんでした。そこで、本研究では,老化細胞がコラーゲンの質に与える影響や老化細胞に対するナイアシンアミドの働きに着目し研究を進めました。

老化細胞とは

老化細胞は、加齢とともに体内に蓄積する分裂を停止した細胞です。これらの細胞は炎症を引き起こす物質を放出し、周囲の健康な細胞に悪影響を及ぼし身体の機能低下や様々な病気の原因になると考えられています。

オートファジーとは

オートファジーは、細胞内の古くなったタンパク質や不要な細胞内小器官を分解し、再利用する仕組みです。細胞の「掃除」や「リサイクル」機能とも例えられ、細胞を健康に保つ上で重要な役割を担っています。健康な肌の維持にもオートファジーが重要であることが明らかになってきています(図2)。

図2:オートファジーとは
細胞内の分解機構の一つ。細胞内に損傷した細胞小器官やタンパク質などが生じると隔離膜と呼ばれる膜が出現し、それらを取り囲みながらオートファゴソームと呼ばれる小胞を形成する。その後、オートファゴソームはタンパク質分解酵素などを含むリソソームと融合し、オートリソソームとなったのち内容物を分解する。オートファジーは細胞の恒常性維持に重要な役割を果たす。

ナイアシンアミドとは

ナイアシンアミドはビタミン B 群の一種で化粧品成分として広く使われています。肌のバリア機能の改善やメラニンの生成を抑える効果などが知られていますが、近年、その多様な働きが注目されています。

3. 老化細胞では異常なコラーゲンが蓄積することを発見

概要

 コラーゲンを産生する線維芽細胞を老化させたのち、細胞内のコラーゲン凝集体を免疫染色法で検出し、正常な細胞と比較しました。

試験方法

 老化した線維芽細胞では正常な細胞に比べて、コラーゲンの凝集体が蓄積していることがわかりました(図3)。さらに、私たちは老化細胞ではヒートショックプロテイン47の産生量およびオートファジー活性の低下が関係していることを明らかにし、老化細胞でコラーゲンの凝集体が蓄積する原因となっていることが推測されました。

図3 :老化細胞における異常コラーゲンの蓄積
試験方法:ドキソルビシンにより老化を誘導した線維芽細胞におけるコラーゲン凝集体を蛍光免疫染色法によりタイプIコラーゲン(緑色)およびタンパク質凝集体(赤色)の共局在(黄色,白矢印)を観察することで調べた

4. ナイアシンアミドが老化細胞の異常なコラーゲンを除去することを発見

概要

 上記の検討により老化した線維芽細胞ではコラーゲンの凝集体が蓄積することがわかりました。そこで、ナイアシンアミドが老化細胞内のコラーゲン凝集体に及ぼす影響を調べました。また、ナイアシンアミドのオートファジーへの作用についても検討しました。

試験方法

 老化した線維芽細胞にナイアシンアミドを添加することでコラーゲン凝集体の減少が認められました(図4)。また、ナイアシンアミドにオートファジー活性亢進作用も認められ(図5)、同成分のコラーゲン凝集体除去作用のメカニズムの一つであることが示唆されました。

図4:ナイアシンアミドのコラーゲン凝集体除去作用
試験方法:老化した線維芽細胞をナイアシンアミドで処理したのち図3.の方法と同様にコラーゲン凝集体を観察した(下図)。また,得られた画像より1細胞あたりのコラーゲン凝集体量を算出した(上図)。**P<0.01, ***P<0.001 (One-way ANOVA followed by Dunnett’s test)
図5:ナイアシンアミドのオートファジー活性化作用
試験方法:RFP(赤色蛍光色素),GFP(緑色蛍光色素)および LC3(オ ートファジーマーカー)を融合させ細胞内で安定的に発現させたのち、 ナイアシンアミドを添加し 24 時間培養した。培養後、RFP および GFP の蛍光強度比を指標にオートファジー活性を算出した。 **P<0.01(t-test)

考察

 本研究で老化した線維芽細胞では正常な構造を形成できなかったコラーゲンの凝集体が蓄積することが明らかとなりました。従来、加齢に伴い肌のコラーゲン量が減少することが知られており、その原因はコラーゲン合成能の低下と考えられていました。しかし、今回の研究結果から加齢などにより老化細胞が増加し、正常なコラーゲンが分泌されないことも肌のコラーゲン量低下につながっていることが考えられました。また、本研究により、これまでコラーゲンの合成を高めることが知られていたナイアシンアミドに、異常なコラーゲンを除去する新たな作用を見出すとともに、その作用メカニズムとしてオートファジーの活性化が示唆されました。この発見はナイアシンアミドのシワ予防・改善効果を高めるための新たなメカニズムを示唆しています。

5. まとめ

 本研究により老化細胞ではコラーゲンの恒常性が破綻することでシワを含む皮膚の老化に影響を及ぼすという新しい知見が得られました。また、この問題に対してナイアシンアミドがコラーゲン凝集体を減少させることで皮膚老化予防に働いていることが考えられました。

発表先

1)第35回 国際化粧品技術者会連盟学術大会2025(IFSCC France – Cannes Congress 2025):ポスター発表

引用文献
  1. Ishida Y et al., Autophagic elimination of misfolded procollagen aggregates in the endoplasmic reticulum as a means of cell protection. Mol Biol Cell. 20: 2744-54 (2009).
  2. Ressler S et al., p16INK4A is a robust in vivo biomarker of cellular aging in human skin. Aging Cell. 5: 379-89 (2006).