皮膚科学コラム

角質ケアの「ピーリング」効果とは?
正しいピーリングの方法と効果的な角質ケアを徹底解説

本サイトで掲載している情報は、一般的な素材にも含まれる成分に関する学術研究成果です。特定の効果を保証するものではありません。本研究成果は限られた条件での成果です。

「角質ケア」といえば、多くの方がピーリングを思い浮かべるのではないでしょうか。ピーリングは不要な角質を剥がすお手入れのことです。しかし、ピーリングには様々な種類があり、「本当に効果があるのか?」「肌に負担はないのか?」と疑問に思うかもしれません。
ピーリングにはどのような効果があり、角質ケアとしてどう取り入れるのが正解なのでしょうか?
ここでは、なぜ角質ケアが必要なのか、ピーリングの具体的な効果と種類、そして肌を健やかに保つための正しい角質ケアについて、皮膚の構造から詳しく解説します。

「角質ケア」としての「ピーリング」とは?その「効果」を解説

まず、「角質ケア」における「ピーリング」の基本的な定義と、その効果について見ていきましょう。

ピーリングとは?不要な角質を剥がすお手入れ

ピーリングとは、肌の表面に溜まった「不要な角質を剥がすお手入れ」のことです。
ピーリングには様々な方法があります。例えば、垢すりのように肌を物理的にこすって角質を剥がす方法もあれば、美容成分を使って化学的にアプローチする方法もあります。

化学的なピーリングでよく使われる成分に、「AHA(α-ヒドロキシ酸)」や「BHA(β-ヒドロキシ酸)」があります。これらは、角質同士の結合を弱めて剥がす効果が期待できます。

一般的に、ピーリングの効果はBHAよりもAHAの方が高いとされています。

図1.ピーリングの効果

なぜ「角質ケア」が必要?肌の仕組みと「角層」の重要性

そもそも、なぜ「角質ケア」や「ピーリング」が必要になるのでしょうか。それには、肌の最も外側にある「角層(かくそう)」の仕組みが深く関わっています。

肌のバリア機能の主役「角層」

肌の表面には「角層」とよばれる層があります。これは、角化した表皮角化細胞が十数層積み重なったものです。
角層は、ラップフィルム1枚程度の非常に薄い膜ですが、私たちの生命を守る重要な役割を担っています。主な役割は、体内の水分が失われないようにする「水分を通さないバリア」機能と、外部からの異物の侵入を防ぐ「物理的なバリア」機能です。

図2.肌のバリア機能

「表皮ターンオーバー」と丈夫な角層ができるまで


角層は皮膚の最外層にあるため、ダメージを受けて機能が低下しやすい部分です。そのため、「表皮ターンオーバー」によって常に新しい細胞と入れ替わっています。

表皮の一番下にある「基底層」で新しい細胞が生まれると、それが「有棘層(ゆうきょくそう)」「顆粒層(かりゅうそう)」へと押し上げられ、最終的に「角層」になります。

  • 有棘細胞の段階で、細胞間脂質(角層細胞の間を埋める脂質)のもとや、フィラグリン(角層細胞を強くするタンパク質)のもとが作られます。
  • 顆粒層になると、脂質やタンパク質が細胞内で集まり層板顆粒やケラトヒアリン顆粒が形成されます。
  • 最後に角層細胞になる時、層板顆粒を放出して細胞同士の隙間に細胞間脂質を充満させ、ケラトヒアリン顆粒のタンパクがフィラグリンになりケラチン線維を束ねることで、固くて強い「バリアとしての角層」が完成します。
図3.表皮ターンオーバー

「ピーリング」のやり過ぎはNG!「効果」が裏目に出る理由
主な原因

丈夫なバリアである角層ですが、「ピーリング」の方法を間違えると、その効果が裏目に出てしまうことがあります。

ピーリング効果は高ければ良いわけではない

「ピーリング」と聞くと、強力な効果を期待しがちですが、ピーリング効果は高ければ高いほどよいというわけではありません。
前述の通り、角層は身体を保護するバリアとして機能しています。そのため、必要以上にピーリングしてしまうと、この大切なバリアまで剥がしてしまい、肌状態が悪くなるのです。

バリア機能の低下が肌あれを招く

強い洗浄剤の使用や、過度な洗浄・ピーリングを繰り返すことで角層がダメージを受けると、バリア機能が弱まります。

バリア機能が弱まると、肌内部の水分が蒸発しやすくなり(乾燥肌)、外部からの刺激にも敏感になって炎症を起こしやすくなります。

その結果、表皮のターンオーバーが乱れて、正常な角層が形成されなくなり、さらに乾燥や炎症が進むという「肌あれ」の悪循環に陥ってしまうのです。洗浄以外にも、強い紫外線、ストレス、ホルモンバランスの乱れなどもターンオーバーを乱す原因となります。

肌あれがさらなる「角質肥厚」を招く

実は、角層のバリア機能が低下すると、肌はそれを補おうとして、角層が剥がれにくくなり、かえって厚く重なってしまうことがあります。これは、角層細胞同士をつなぎとめているタンパク質が分解されにくくなるためと考えられています。

乾燥した古い角層細胞が厚く積み重なると、表面がささくれ立ち、肌の透明感が損なわれます。また、触ると「ごわごわ」した肌触りになり、なめらかさも失われてしまうのです。

正しい「角質ケア」と「ピーリング」の適切な使い方

では、肌にダメージを与えず、ピーリングの効果を得るには、どのような「角質ケア」を心がければよいのでしょうか。

ピーリングがおすすめな肌状態とは?

ピーリングにおすすめなのは、まさに上記のような「角層細胞が厚く重なってごわついた肌」の状態です。

このような肌には、角層細胞同士の結合を分解する効果のあるAHAやBHAを使ったピーリングが適しています。ただし、AHAの一種である「グリコール酸」は、角質を溶かす効果が高い反面、肌への刺激も強くなる可能性があるため、皮膚科医に処置してもらうようにしましょう 。

ピーリング以外の角質ケア:「保湿」の効果

角質ケアはピーリングだけではありません。実は「保湿」も角質ケアに繋がります。

化粧品に使用されるグリセリンなどで角層内の水分量を高めることでも、角層細胞同士の結合が分解されやすくなるとの報告もあります。ピーリングが肌に合わないと感じる方や、マイルドな角質ケアをしたい方は、まず保湿ケアを見直すのも一つの効果的な方法です。

重要なのは、角質ケアとしてのピーリングは、あくまで角層が厚く積み重なった状態を素早く改善するための「特別なケア」であると認識することです。

肌のごわつきが改善し、角層が元の状態にもどった後は、通常のお手入れに戻しましょう。
本当の意味での正しい角質ケアとは、普段から角層をしっかりと保湿してうるおいを保つことです。これにより、表皮のターンオーバーが正常に働き、バリア機能が高い健康な角層が日々作られるようになります。

まとめ

正常な角層は、肌を守るために一定の厚さで形成されていますが、その厚さを精密に調整するメカニズムは、まだ完全には解明されていません。そのため、現在のピーリングは、必要な角層まで剥がしてしまうリスクが伴います。
もし、バリア機能を発揮するために必要な角層細胞は残し、「不要になった角質のみ」を剥がすことができれば、角層を常に良い状態に保つことが可能となります。これこそが、ピーリングの効果を最大化し、リスクを最小限にする理想の「角質ケア」と言えるでしょう。
そのために、従来のピーリング成分(AHAやBHAなど)とは異なるメカニズムで、不要な角質のみを取り除く技術の開発に挑戦しています。

監修医師
医療法人社団明海皮ふ科理事長 皮膚科専門医 本橋尚子先生